コンビニと不良たちと空手と私と②
目線を感じた。
私はその方向へ振り向くと不良たちが私を睨んでいた。
私は彼らとは初対面だ。なのに敵意を向けられている。
座っていた不良たちは立ち上がり、こっちへ詰め寄ってくる。
人数は三人。顔立ちにまだ幼さが残り、体つきもそんなに大きくない。
しかし、その目立つ髪色、派手な服、威張った態度。
全くもって「不良」そのものであった。
そんな彼らは不敵な笑みを浮かべ、
「にぃちゃん、いい体してるね~」
明らかに私の体をバカにした発言だ。その下卑た笑みは何だ。
好意はどうやっても見て取れない。
「でも体大きいだけじゃ、ダメっしょ?根性よ、根性がなきゃ。」
意味不明なことを言いながらも、詰め寄ってくる。4m、3mと。
「兄ちゃんの腕も太いねー。触らしてよ。」
不良の一人が私の腕を掴もうと、手を伸ばしてくる。
私はさっと腕を払い、
「そういうのはやめていただけませんか?」
と柔らかく諭すが、それが彼らの逆鱗に触れたか、
「何その上から目線。ちょっと気に入らないんだけど。」
「ちょっと体がでけーからといって、オレらをナメんなよ?」
私は理解が追いつかず、
「私に何が御用ですか?貴方たちと私は初対面のはずですが。」
とあくまでも、社会人らしく、落ち着いた態度で接しようとするが、
不良たちはとうとう怒りを露わにし、
「それだよ!その気取った面が気に入らねえんだよ!」
「オレたちを簡単に倒せる。そんな顔してんよ、お前。オレらをナメんな!」
私は頭を抱えた。
ああ、よくいるんだよ。こういうの。
自分が強いと勘違いする人が。
私はこれ以上相手にしていられず、
「私は急ぎの用があるので失礼しますね。」
と不良たちの側を通り抜けようとした。
そしたら、
「待てや!てめぇ!」
と私の胸ぐらを掴んできた。
その瞬間、私の体が自然に空手の構えに入っていた。
私は冷静を保ちつつ、掴んできた手を素早く振り払った。
これがいけなかった。
「やんのか!?やんのか!?」
「やろうぜ!やっちまおうぜ!」
と、不良たちが明らかな敵意、戦意を見せてきた!
先手必勝。
コンマ秒巻。
私の胸ぐらを掴んでいた不良の腹を目掛けて、
この鍵突きを放った。
明らかな隙を突いての攻撃をされた不良はその場で膝をつく。
彼の肋骨にヒビを入れた。そんな嫌な感触が私の右手に残った。
残る不良たちの動揺を私は見逃さず、すぐさま私の横にいた不良の腹に、
この横蹴りを叩き込んだ。不良はボールのように吹っ飛んでいった。
手応えは感じた。脚に来る衝撃が重く感じた。
私は最後の不良と真正面に立ち会った。私は獣の目をしていた。
明らかに青ざめている最後の不良の足を目掛けて私は、
この下段回し蹴りを見舞った。
足の筋肉を無理やり引きちぎった、そんな嫌な感覚が私の右足に残った。
最後の不良は何が起こったのか理解できないまま、崩れ落ちていった。
数十秒にも満たない静寂後。
私はもう敵意を向けてくるものがいないのを確認し、構えを解いた。
戦意を喪失したのか、すっかり怯えきった不良たちを背を向け、歩き出した。
途中で私は頭をかきつつ、
「手加減はしたつもりなんだけどなぁ。」
とひっそりと呟きながら、その場を去った。
次回に続く?