上段回し蹴りで地球を救うふりをするブログ

読者たちが「クスッ」と笑えるようなおバカブログを書いています。あ、上段回し蹴りと地球は全くないです。

私の鍛えてきた武が、ある少年の仕事を奪った話

今、私は非常に落ち込んでいる。自らを責めている。気分は消沈しており、会社内でも家でもずっとネガディブ気味だ。

 

もう結論から言おう。

 

良かれと思ってやった私の善意が、ある少年の仕事を失わせてしまったのだと。

 

まさかこんな結末が待っていたなんて。

 

私のとった行動が間違っていたなんて。

 

私が余計なことをしたせいで。

 

少年は!あの純粋であどけない顔の彼は!

 

・・・順を追って話したい。

 

私は仕事帰りに、とあるコンビニをよく利用していた。もう数年も通っているため、店側からしたら、私は常連に当たるだろう。もしかしたら、店員たちでは「マッチョなおじさん」といった私の認識が通ったりしてるかもしれない。

 

そんな中、ある店員とよくレジの精算で顔を合わせる機会があり、彼も私もすっかり顔なじみの間柄だった。

 

店員の彼はどう見ても若く、少年そのものだった。少年特有の顔のあどけなさ、純粋さ、余裕の無さを彼は持っていた。10代特有の特徴といってもよかった。

 

そして彼はブスだった。童貞間違い無しのレベルだった。身も蓋も無い言い方だが。

 

そこへ悪いことに、彼はトロくさかった。まるでの◯太並のダメ男だった。少年ということを考慮に入れても、ちょっとひどかったと思う。ここへブスというマイナス補正が入るため、私には彼が余計にダメ少年に見えていた。

 

実際、よくお釣りを間違えて渡してくるわ、レジ打ちでもたもたするわ、妙に焦ったりするわ、見ているこっちがハラハラする程だった。何回も私の心内で「落ち着いてよ!COOLだよ!KOOLじゃなくて!」と突っ込んだ程だ。

 

中でも極めつけは、私が大好きな肉まんをポトっと床に落とされ、その後何もなかったかのように、袋の中に入れようとした時はズッコケた。さすがに交換してもらったが。

 

しかし、私はブスでの◯太みたいにトロくさい少年が、不思議と嫌いではなかった。嫌悪感も見下し感もなく、どちらかと言うと、彼の不器用なりの必死な頑張りにほっこりされた。

 

また勇気づけられ、私も彼に負けずに頑張ろう!と逆に不思議なエールをいただいていたが、それを口に出すことはなかった。第一、ブス男相手に気持ち悪いじゃん。

 

ただそれと同時に、彼のあまりにもの不器用さに、私はいつも勝手にハラハラしていた。もたつく、ノロい、焦る、の立派な三拍子揃ったダメ店員そのものだった。

 

恐らくだが他のところで働くのは厳しそうにさえ感じた。もし、彼が私の会社員だったとしたら、彼とはあまり一緒に働きたくない。

 

もし一緒に働くとなると、必ず彼の尻拭いをされることは目に見えてる。後、彼のブスさで会社の女性たちから嫌われるのも目に見えている。

 

人はつくづく不平等に作られているのだと、哲学的に感じさえもした。

 

と、ここまでは笑い話。ここからは一気に重い話になってしまう。

 

あの日は、冬の本格的な到来で肌で寒さによる痛みを感じる日だった。事件が起きたのはその日だった。

 

いつものように仕事帰りにコンビニに寄った直後だった。怒声が店内から飛んできたのは。

 

怒声がレジから聞こえてきた。怒声を発していたのはヤンキーたちだった。ヤンキーたち3人がよってたかって、レジを挟んだ向こう側の店員に文句を言っていた。

 

その店員を私の目に捉えた時、私は思わず手で目を覆いかけた。よりによって、その店員があのトロくさい少年、の◯太君だった。

 

すっかり激昂しているヤンキーたち。泣き顔で必死に対応している少年。見てはいけないものを見てしまった私。まるで出来の悪いコントを見ているようだった。

 

最初は全く事態が飲み込めなかった私だが、汚い言葉で少年をなじるヤンキーたちの言葉を拾い集めると、どうやら彼らはタバコかお酒を購入しようとしているようだった。

 

ヤンキーたちはどうみても未成年で、明らかに買える身分ではなかった。恐らく、店員の少年は身分証明を求め、未成年は購入することが出来ないことを説明し、これがヤンキーたちの逆鱗に触れてしまったのだろう。

 

こうして、ヤンキーたちが「他の客は買ってるじゃねえか!」「俺たちをナメてんのか!」「俺たちをガキ扱いすんな!」と何の罪もない少年を、ねずみをいたぶる猫のように責め立てる図式が見事に完成した。こんな図式見たくもなかった。

 

更に運の悪いことに、他の店員がおらず、また他のお客様もヤンキーたちをのぞけば私一人のみだった。

 

正直に告白しよう。ここで見て見ぬふりをして、Uターンしようと一瞬だが頭によぎってしまった。ヤンキーたちの面倒な絡みに巻き込まれたくなかったし、私にも社会的地位というのはあった。保身行動をとりかけていた。

 

でも結局は私は逃げなかった。ここで逃げたら男じゃない。二度と男を名乗れなくなる。その思いが、私を突き動かした。

 

私の計算高さもあった。私は空手を学んでおり、人間を殴る・蹴る技術は一応あった。実際に相手をボコボコにし、逆にボコボコにされるのは日常茶飯事。おかげで人を殴ったり蹴ったりする感触がすっかり身についていた。その恩赦か、大会で入賞したりもした。

 

更に言えば、私はどちらかと言うと体格的に恵まれており、身長は180cm近く、体重も80キロ近かった。3✕歳の私にしては、ベンチプレスも120キロは挙げており、体にキレもあった。要するに格闘面では少しは強い方だったと思う。

 

対して、ヤンキーたちは髪を派手に染めたり、いかつい服を来たりなどして自分を大きく見せてはいたが、体格が痩せっぽちなのはバレバレだった。身長も170cm以下、体重も60キロ台と低い方で、何より殺気、威圧感というものが全く感じられなかった。つまりは雑魚であった。

 

正直、ヤンキーが3人同時に私に攻撃してきたとしても、2分もあれば制圧は十分可能だったと思う。それくらい力量差が目に見えてあった。

 

そこで問題点が一つ。

 

ヤンキーたちを力づくで黙らせるか。否か。

 

当然、私は後者を選んだ。ヤンキーたちに非があったとしても、暴力を振るうのは論外。こんなくだらないことのために私は空手をやっているんじゃない。

 

私の腹を殴られ、私の脚を蹴られ、私のあばら骨にヒビが入り、上段回し蹴りで私の意識が飛び、レバー打ちをモロに食らって吐瀉物を床にぶちまけたり、とにかく地獄を見てきたのは、間違ってもこんなことのためじゃない。あくまでも己を高めるためだ。

 

こんな理由で、ヤンキーたちをボコったり、ガンつけて黙らせるのは論外。空手家がとるべき姿じゃない。武道家じゃない。よって私は別の方法を選んだ。

 

ここで私は機転を利かした。自分でも名案だと思っていた。当時は。

 

私は突然奇声を挙げながら、オーバーリアクション気味でヤンキーたちと店員と少年たちの輪に入り込んだ。

 

「ごめんな!ごめんな!私急いでいるから、先にレジを済ませちゃっていい!?いい!?」

 

イメージとしては酔っ払ってテンションが上がりきった客を意識してみた。私の演技力は人並みだったので、そこは気迫で押すことにした。

 

ヤンキーたちは予測もしない事態に出くわし、すっかり怒りを削がれた状態。私を見る目つきが、明らかにキチガイのそれだったが、私はあえて我慢した。汚名を被った。

 

私は適当に商品を選んで先に精算を済ませ、ついでに肉まんも三個購入した。

 

そして呆気とられていたヤンキーたちに、

 

「先に精算させてくれてありがとう!ありがとう!お礼に肉まんを一個ずつおごるよ!それじゃあ!じゃあ!」

 

と肉まんを手渡し、最後まで酔っ払った客を貫き通し、そそくさとコンビニを後にした。店員の少年と目が合ったが、店員の少年も、私を見る目つきがキチガイのそれだったのは、さすがに傷ついた。

 

こうして暴力に訴えることなく、あくまでもヤンキーたちの怒りを削ぎ、場をしらけさせる作戦は、私なりに成功した。

 

恐らくヤンキーたちはしらけ、または肉まんによる買収によって、店員の少年に怒りをぶつけるのを止めたはずだ。

 

この行動は非常に勇気がいったし、度量も必要とされていたが、私なりにこの難題をなんとかしのげた。珍しく、自分で自分を褒めたい気分だった。

 

しかし。私の行動が間違っていたと発覚したのは一昨日。

 

その後が気になっていた私はコンビニをこっそり訪れ、店員の少年の姿を確認しようと思った。しかしいつもの時間帯ならいるはずの店員の少年がいなかった。

 

仕方なく、他の店員にそれとなく聞いてみたら、素っ気ない一言。

 

 

 

 

 

「ああ、彼は辞めましたよ。」

 

 

 

 

 

その後はあまり覚えていない。

 

ヤンキーたちからのクレームに店側が屈したのか、店員の少年の無能さでクビになったのか。店員の少年の働くモチベーションが低下し、自ら退職を求めで出たのか。あるいは他に何らかの理由があったのか。

 

私はあれこれ考えながら、ひたすらお酒を煽っていたのは覚えている。

 

ただ分かるのは一つ。

 

私が余計なことをしたせいだ。

 

何もしなければよかった。見て見ぬふりをすればよかった。私のよかれと思った善意が、店員の少年の仕事を失わせる最悪の結末を招いた。

 

あのブスで無能な少年だ。次の仕事探しで非常に苦労するのは目に見えている。きっと少年は私を恨んでいるに違いない。私という存在が悪魔に見えているはずだ。

 

空手で鍛えた武が、たとえ善意だったとしてもこんな結末を招くなんて。

 

私は間違っていたのだろうか。あの時、どうすればよかったのだろうか。答えが欲しくてたまらない。

 

こうして私は今日もまずい酒を飲む。くそったれ。

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