私とのび太さん(♀)とドラえもんさん(♀)と
私が通う訓練校は今日もひどかった。
この停滞感と諦め感と哀愁感が込もった訓練校ブログは私くらいだろう。
私が現在通っているコースは、ビジネスパソコン基礎科。
ぱそこんのそふとにあるわーどとえくせるを、文字通り最初から学ぶコース。
これが義務教育範囲の学校ならともかく、大の大人たちが学び、屈辱を屈辱と楽しめる人でないと精神が持たないと思う。
ただ、中には本当にぱそこんを学ぶ機会に恵まれなかっただけで、根はすごくいい生徒が超少数ながら存在するのが、かえってやっかい。
ぱそこんを初めて触る生徒もいた自体に最初は驚いたが、慣れは恐いもので、それが普通の雰囲気になってしまった。
最初は退学覚悟でファッ○クユーを決めようとしていたが、
人生から落ちこぼれた生徒たちを見て、
「私よりまだまだ下はいるんだ!」と謎の精神の落ち着き様を覚え、
訓練校に通うまでに人生のレールから致命的に離れた人がどこまで這い上がれるかを見届けたくなり、今日も通っている。
そして
「助けてー!ドラえもんさん(♀)!」
「どうかしましたか、のび太さん(♀)?」
がクラス中に響き渡る。
見事に凸凹コンビを決めている生徒を、私は寄生虫を見る目つきで見守っている。
のび太さん(♀)はスペックが異様にひどい。控え目に言っても。
ぱそこんのきーぼーどの位置が分からくてもいい、
まうすの動かし方も分からなくてもいい、
そふとの開き方と閉じ方も分からなくてもいい、
ぱそこんの電源の入れ方すら分からなくてもいい、
それらはまだいい。許せる。許すしかない。
問題は周囲の足を正々堂々、当たり前の権利のようにひっぱること。
「今日はここまで進めます」
「先生分かりません!」
「えーと、ここはこうですね」
「先生分かりません!」
「ああ、あれはこうですよ」
「先生分かりません!」
「ええ、そこはそうですよ」
「先生分かりません!」
次第に敵意を持ち出すクラスメイトたち。
それを見かねたドラえもんさん(♀)が、
「もしよかったら私が教えましょうか?」
と助け船を買って出た。
その瞬時、講師が深く息をなでおろしたのを私は見逃さなかった。
ドラえもんさん(♀)のスペックは異様に高く、
1を教えたら5を知り、
「いやいや、なんでここへ来たの」
と誰もが疑問を持つ程のチートさ。
そんな最低で最悪で最高なまでに凸凹が合わさり、
今日ものび太さん(♀)はドラえもんさん(♀)の足を引っ張る。
私はそんなドラえもんさん(♀)が怖くなり、絶対過去に後ろめたいことがあるのだと決めつけていた。
優しくするのはいつだって理由が必ずある。
心の底からの善意は存在しない。あってたまるか。
「優しくするのに理由はいるの?」
とのたまう方がいれば、まずは$狙いを疑った方がよい。
ざんざん悪事を働いた人であればある程、尚更。
こう決めつけていた私を、ドラえもんさん(♀)は見切っていた。
今日、ドラえもん(♀)から切り出された。
「アキトさんごめんなさい」
「えっ何が」
「私、どうしても困っている人を助けたくなってしまって」
「えっ」
「分かってはいるんですけど。アキトさんを呆れさせてしまっていても」
「え」
「私前は看護師をしていたんです」
私は心の中で焼き土下座を決めた。