上段回し蹴りで地球を救うふりをするブログ

読者たちが「クスッ」と笑えるようなおバカブログを書いています。あ、上段回し蹴りと地球は全くないです。

俺、昔ヤンキー女と付き合っていたけど質問ある?その③

「別れよう。」私の部屋にこの言葉が響いた。いつものように私のベッドで漫画雑誌を読んでいたアキナは一瞬きょとんとしていた。「アキオ、なんか言ったん?」「だから別れよう。」「あー、はいはい。」「俺はマジで言ってる。」「マジなん?」「マジだ。」「マジで?」「ああ、マジだ。」「・・・。」「・・・。」「・・・して。」「え?」「どうしてなんだよ!!!」彼女は怒りを爆発させた。

 

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 「アキオ、てめぇ、他に女が出来たのかよ!」「いや、浮気はしていない!」「ならどうして!」「もう疲れたんだよ!本音でぶつかるのが!」「それでも男か!」「そうだよ!」「あーあー、分かったってば!」「は?何が?」「アタシとしたいんだろ?」

 

そう言い、彼女はシャツを脱ぎ出した。いつもの展開だと彼女は思い込んでいた。私は逆上し、彼女のほおを叩いた。それにスイッチが入ったのか、アキナはこれまで一番暴れ出した。彼女が手にとっていた漫画雑誌を振り回し、私をひたすら叩いてきた。私はただ耐えるだけだった。漫画雑誌が週刊マガジンだったのが、やけに印象に残った。

 

暴れるだけ暴れたアキナは電池が切れたかのように、止まりだした。私の部屋はめちゃくちゃだった。窓ガラスにヒビが入り、テーブルは倒され、壁には凹みが出来、もはや泥棒に入られた状態だった。ついでに私が作成したプラモ、Ζガンダムさんが原型を留めていなかった。

 

アキナは絞り出すかのように、この言葉を呟いた。「嫌だ。別れたくない。」「いや、俺が無理だから。」「アタシ、我慢するから。いい子になるから!」「そういう問題じゃない。」「この金髪を黒髪に染め直すから!タバコもやめる!」「だから違うって!」「嫌だ!嫌だ!」「分かってくれ。頼む。」「嫌!嫌!嫌!」

 

結局、この日の別れ話は平行線に終わった。まさかアキナがあれだけ強情とは思わなかった。ここまで引きずられるとは思わなかった。私は時間をかけてゆっくり説得していこうと思っていた。この時点では。

 

数日後。アキナの友人に呼び出された。アキナの友人はヤンキーで、私とも顔見知りである。数回か一緒に飲んだことがある。彼らに喫茶店に呼び出され、私は説得を受けた。「アキナから聞いたけど、アキナと別れたいんだって?」「どうしてなの?アキナがヤンキーだから?」「アンタの気持ちは分かるけど、男見せようや?」「アキナのいい所たくさんあるからさ。」「アキナ、めっちゃ泣いてたよ?」

 

本来なら「いい加減にしろ!二人の問題にアンタたちが関わるな!」と一喝すればいい話だが、アキナに別れ話を切り出したのは私。アキナをこれ以上受け止めきれなかった、男としての技量の狭さ。全ては私が悪い。それが故、アキナの友人の説得をひたすら耐えるのみだった。拳を強く握りしめながら。

 

しかしそれも長くは続かなかった。数回か説得されたある日、見るからに強面のヤンキー3人たちが、私の曖昧な態度に腹を立てたのか、強引に話に出た。「アキオ、いい加減にしろよ!」「俺たちがどれだけ心配してると思ってるんだよ!」「ヤンキーだからって、あまりナメるなよ!」完全に彼らは頭に血が昇っていた。ヤンキー特有の短気である。

 

私はいつものように黙り込んだが、強面ヤンキーの一人が私の胸ぐらを掴み、私を睨みつけた。「オメー!アキナの体目当てで付き合っていたのかよ!」この瞬間、私の理性は消し飛んだ。私の拳が勝手に動いた。

 

次に我に帰った時、二人は地面に倒れていて、残りの一人は必死に私を止めていた。詳細は書きたくない。武勇伝どころではない。恋人の別れ話でキレて、ヤンキーをボコボコにしてしまった。こんなかっこ悪い話はない。今でも恥そのものである。

 

数日後。やっとアキナと会えた。私がヤンキーを倒してしまった話を聞いたのだろう。アキナ本人から私に会いに来た。気のせいか、あるいは私の思い込みか、アキナはどこか吹っ切れた顔をしていた。

 

「よっ。アキオ久しぶり。」「おう。お前もな。」「アキオ、やり過ぎだって。」「ごめん。」「あいつらも悪いから、あんま怒れないけど。」「彼らは大丈夫だった?」「ああ、しばらくは大人しくすれば治るだろ。アキオのマジギレ怖かったってよ。」「すまん。」「だから気にすんなって。」「うん。」「そんで、アタシ達別れよ。」「ああ。」「アタシと別れて、せいせいするだろ?」「アホ。最低三ヶ月は引きずるわ。」「重っ!アキオは乙女か!」「うるせぇ。」「んじゃ、アタシそろそろ行くわ。」「うん。」「元気でな。アキオ。」「そっちもな。アキナ。」

 

私は去るアキナの背中を見送った。今すぐ追いついて、アキナの体ごと抱きしめたい衝動感に駆られたが、結局はそれが出来なかった。

 

こうして、アキナとの恋は終わった。私が振るという、最悪の結末で。あれ以来、アキナとは会っていない。数年前に、風の噂で結婚したとかシングルマザーとかで聞いたきりだ。

 

当然、私は自分の器の小ささに絶望し、悲観し、自らを責め、ひたすら酒を浴びるように飲んでいた。酒に逃げていた。ウイスキー一気飲みで、自分の体に罰を与えていた。マジで私の体が壊れる寸前まで、自分を罰していた。追い詰めていた。

 

この記事を書いている今、ようやく吹っ切れて、アキナと出会えてよかったと、これもまた人生の詩の一つだと思えるようになった。あの時、アキナの小さくなる背中を抱きしめていれば、また違う人生になっていただろう。私はアキナの夫になり、親バカなパパになっていたかもしれない。全ては終わった話だ。

 

しんみりは嫌なので、無理やりオチとして

 

この前、「くまみこ」の同人誌をネットで漁った。無論、酒田響さんが主役のエロ展開モノである。私がオカズにしたのは言うまでもない。

 

 

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以上ー!

 

所要時間1時間5分

文字数2375文字