上段回し蹴りで「百獣の王」武井壮を倒してみる④
武井壮さんに格闘技の経験がなく、特に対人戦が初めてという点をついた私は、ワンツローという、初見殺しで武井壮さんに徐々にダメージを与えていく。
これを何回か繰り返し、私の有利に勝負を運んでいた。
しかし。
武井壮の目が変わった。獣の目になっている。
私は背中に嫌な感覚が駆け上がっていくのを感じた。
明らかにヤバイ。嫌な予感しかしない。
私は焦り、更に攻めを激しくする。
やられた。
もう短時間で、私の攻撃パターンを把握された。見切られた。
その時に至って、私はやっと思い出した。
彼が「百獣の王」であり、彼は様々な動物と戦ってきたのだと。
無論、様々な動物との戦闘を経験している。
彼はゴリラ、カンガルー、アフリカ象などを倒してきたのだ。
当然、倒し方も知っており、また短時間で相手の弱点を見抜く術にも長けているのだと。
そんな彼は私のワンツーローを見切り、彼の攻撃が始まった。
一瞬だった。
その一瞬で武井壮は間をつめ、
高速ワンツーワンの三連発を私の顔面に叩き込んだのだ!
スピードはあると思っていたとは、ここまでとは!
ワンツーが速すぎる!ボクシングでもなかなか出ないスピードだ!
100m10秒は伊達ではないということか!
だ、ダメだ!私程度の動体視力では、彼のスピードを見切れない!
慌てて反撃に出るも、
あっさりとかわされる。
武井壮の顔がニヤリと歪む。
その顔を見て、私はしまったと青ざめた。
彼は私の不利な点を的確についてきた!
私は空手ルールによる顔面殴りNGに対し、彼は顔面殴りOK。
彼は腹部や脚部への攻撃に気をつければ、顔面を気にする必要はない。
片や、私は顔面も気にしなければならず、結果的に彼の攻撃がどこに来るか読めず、反応が一瞬だが送れるのである。
この一瞬の反応の遅れ。これが致命的だった。
だめだ。速い、早すぎる。
あっという間にワンツーワンを繰り出され、私が反撃してもその反応神経にかわされる。これの繰り返し。
しかし武井壮の顔には余裕が戻り、私は顔面へのダメージの蓄積で、少しずつ意識が刈り取られていっている。
このままでは負ける。
ではどうやってこのスピードに追いつく?反応する?
ー無理だ。私がガードしなければならない範囲が広すぎる!
顔面を意識しすぎるあまり、腹部へいい一発をもらったら、ヤバイ。
かといって腹部を守りすぎると顔面が!
ああ!ちくしょう!このままでは!
やぶれかぶれに、
私のワンツーローを当たり前のようにかわす。
ほんの数分前ではモロにもらっていたのに。
武井壮の「君の攻撃は全て見切ったよ」顔が非常にムカつく。
そして。
私は勝利を確信した。
続く。次回完結。
なお、超能力や夢オチはありません。
格闘勝負としてきちんと決着がつきます。
読者の諸君も、よろしかったら推測して楽しんで下さい。