16歳の高校生をボコボコにした3◯歳の私②
前回のあらすじ。
大魔神に「今日も稽古をお願いします!」と挨拶をしたやる夫。
私はそんなやる夫をバカな目で見つめた。
黒帯クラスで県大会準優勝者の大魔神。
彼が出現しただけで、道場の雰囲気が変わった。これが強者の放つオーラか。
私はさり気なく道場の出口の扉に近づき、大人のプライドをかなぐり捨てて逃走しようとしたその瞬間、
大魔神「んー、じゃあやる夫、いつものミット打ちやろっか?」
やる夫「押忍!よろしくお願いします。」
この衝撃的なやり取りが私の耳に入った。私は自身の耳を疑った。
あの大魔神の突きと蹴りを、ミット越しといえ受け続けるだと・・・?!
私はやる夫の正気を疑った。しかしやる夫の闘志溢れる目を見て、本気で大魔神の突きや蹴りを受け切るのだと悟った。
私は以前に大魔神に組手でボロ負けをした。
あの圧倒的なパワー・スピード・タイミングは、未だに私のトラウマとして残っている。
どうしても大魔神の強さを知りたかった私は、彼にミット練習をお願いした。私がミットを持ち、攻撃を受ける側で。
大魔神の蹴り
※ミット蹴りはこんな感じです。
大魔神の「とりあえず80%の力で行きますよー」の声と共に、彼の蹴りが私の持つミットへ放たれた!
その瞬間私の体が軽く浮いた。それ程の威力だった。
そして「痛い!」ではなく「脚が壊れる!」という極めて恐ろしい感覚を味わった。
カッターとかで切ったジクジクする「鋭い痛み」ではなく、金属バッドで殴られたような「重い痛み」に近かった。
これを左右の脚で各10発。
この時点で私の脚はガクガクと震え、立てるかどうかも怪しかった。
なお、その翌日。私の両足は正座が出来ない程、壊されていた。内出血だった。
大魔神の突き
大魔神は涼しい顔をしながら「続けて80%の力で突きしますよー」とサラリと言った。この時点で逃げ出したかったのを堪えた私は偉いと思う。
※ミット突きはこんな感じです。基本的に連続で突きます。
ミットを自分の腹辺りに持ち直した私を、大魔神の大きく振りかぶった突きが放たれる!
私の腹に一撃目をもらい、「!?強い!が・・・?」
確かに一撃目は強かったが、先程の蹴り程の威力はなかった。
「大魔神は突きよりも蹴りが得意?これなら私でも耐えられる!」
そんな私の考えはたちまち霧散した。私は勘違いしていた。
続く二撃目、三撃目、四撃目、五撃目と、
「いつになったら終わるの!?」
と叫び出したい程、攻撃が終わらないのである。
さっきの蹴りが一撃ずつとすれば、突きが四~五撃と連続で、私の腹を突く。
ミット越しとはいえ、腹へ連続で突きが叩き込まれる。その連続突きに、ミットを持った私の体が後ろに押し出され始める。な、なんて突進力だ!
連続突きに、腹へのダメージの蓄積が少しずつ蓄積され、次第に吐き気を催しかける。
そんな生き地獄にも等しかった連続突きも、30~40発辺りで終わった。大魔神がやや息切れしつつ。
ようやく生き地獄が終わった安堵感と共に、私の腹がぐちゃぐちゃにかき回される程の痛みに必死に耐えている所を、大魔神が衝撃の一言を放った。
「手加減したといえ、結構持ちこたえましたね!」
大魔神のこの言葉に、私は完全に心が折れた。
「こ、この威力で手加減なの・・・?も、もしミットなしの試合だったら、俺死んでるやん・・・。」
ゾウがアリを踏み潰すような圧倒的実力の差、それを自分自身の肌で感じ取った私は、その日から大魔神を恐れるようになった。
現在も、大魔神との組手になると途端に怯え、攻撃をせずに防御に徹する程である。
そんな大魔神の突き・蹴りをやる夫が受ける
その時の私の脳裏にはこんな光景が思い浮かんだ。
「ああ、やる夫よ、お前はバカだったが、その勇気は忘れない!敬礼!」
と私は心の中でそう呟いた。
こうして大魔神とやる夫のミット打ち練習は始まったー。