私が一目惚れし、ミサイルで世界を終わらせ、別の星へ旅立った日
漫画や映画とかでよくある「一目惚れ」。文字通り、異性を一見しただけで心を奪われ、その人のことしか考えられなくなる。そんな人間として素敵な感情。昔も今も変わらぬ、心の最大のイベント。
正直、この「一目惚れ」は若者たちの特権、あるいは未だに夢を見る中年が持てる感情であり、すっかり女慣れしきった私には、もはや縁のない感情だった。少年から大人へ成長するにつれ、甘く、切なく、すっぱく、まさにレモン色の恋をしなくなった。
それでは「もう一回一目惚れを体験出来る」。この年になっても、あの衝動とときめき感をまた味わえる。まだ私は人間として成長出来る。こんなに素晴らしいことはないだろうか。
それは、太陽が力強く輝き、風によって運ばれる若草の香り、どこか心躍る7月。本格的な夏が訪れる手前だった。私があの子と会ったのは。
偶然そのものだった。休日、私は暇を持て余しており、とりあえず運動不足解除として、ある歩道を散歩していた。
自然たっぷりで、緑の匂い、生命の息吹を肌で感じ取り、心がほんわりと癒やされつつあった。たまにはこんな散歩も素晴らしいと、どこか得感を感じていた。その時だった。
あの子と会ったのは。
あの子の後ろ姿を目に捉えたその瞬間、私の動きが止まった。呼吸が止まった。刻が止まった。数瞬の後、すぐに私は悟った。この感覚の正体を。
私は天を仰ぎ見た。
「クソッ。俺、今年で3✕歳なんだぞ。いい年なんだぞ。まさか。まさかだ。この年になって。」
その後は少年に戻ったような初々しさを混ぜ、
「俺、あの子に一目惚れしちまった。」
風にたなびく、美しい髪。とても引き締まった腰。それと反面し、力強く抱くと壊れそうな繊細な背中。「脚美人」その言葉がふさわしい、そんな脚美。
気が付いた時、私はあの子に声をかけていた。突然の私の声に驚いて、あの子はこちらに振り向く。不安げに帽子を強く握って。
私の頭の中は真っ白だった。何も考えられなくなっていた。動揺しきっていた。どうして突然声を掛けてしまったのか、分からなかった。そもそも、何を言ったのかさえ記憶にない。
そんな私の動揺に、あの子は察したのか、肩の力を抜いて、警戒心を解いてくれた。
私はそれで幾分か落ち着きを取り戻した。声がどもるのを自覚しつつ、私はなけなしの勇気を振り絞り、いたずらを叱られた子どものような顔をして、こう言葉をつなげた。
「すみません。あなたに見とれていました。」
ストレートそのものであった。バカ正直そのものだった。私はこれと決めたら一直線。全力全開。フルスロットル。自分の気持ちに嘘をつかず、まっすぐにぶつける。私はこんな生き方しか出来ないし、ましてや他の生き方も知らなかった。
見知らぬ中年の突然の告白に面食らったのか、あの子は呆然としていた。目をぱちぱちさせる擬音が聞こえてくるようだった。
「人が人を好きになる」この刹那。私は確実に感じていた。私はあの子の言葉を待った。私のなけなしの勇気が受けいられるのか、あるいは否定されるのか、私は審判の時を待つ罪人の立場そのものだった。
数刻後、ようやくあの子は口を開いてくれた。どこか戸惑いつつも、恥ずかしさで赤らめてた表情を見せ、
「アタシ、男だけどいいの?」
その時、私はキレた。何かのスイッチを押してしまった。
発射!!!
発射!!!
発射!!!
発射!!!
発射!!!
その結果。こうなった。
ドーン!!
ドーン!!!
ドーン!!!!
ドーン!!!!!
ドーン!!!!!!
こうして世界は終わった。地球はほんの少しだけ癒やされた。
私は地球を見捨て、別の星へ旅立った。
私は傷心の中、宇宙をさまよう。
かつて人間だった私はこの言葉を繰り返す。
「AV女優パッケージ詐欺と風俗店パネル写真詐欺、てめーは許さねぇ・・・。」
今日も宇宙は平和。
以上ー!
所要時間1時間28分
文字数1601文字